広報いたばし神田松鯉さんインタビュー(令和2年4月4日号)
講談師 神田松鯉さんインタビュー
講談師 神田松鯉さんに板橋区民栄誉賞を贈呈しました
区にゆかりがある重要無形文化財保持者(人間国宝)の神田松鯉(かんだしょうり)さん(成増四丁目在住)。講談師として、伝統的な技法を高度に体現し、長編連続物の復活・継承に積極的に取り組むなど、講談界に大きく貢献されています。
区では、その功績をたたえ、板橋区民栄誉賞を贈呈しました。
今回は、神田松鯉さんをお迎えし、講談・弟子への思いなどをお伺いしました。
板橋区民栄誉賞とは
特に顕著な業績または高い評価を得たことから、社会に希望と活力を与え、板橋区の名を高めた方に対し、その栄誉をたたえる賞です。
このたびは、おめでとうございます。
ありがとうございます。
これまで、亀の歩みで芸の道を続けて参りましたが、このように認めていただき、本懐を遂げたように感じております。
おごらずに、臆せずに、これからも亀の歩みを運んでいきたいと思います。
神田松鯉さんは、長編連続物の復活・継承に力を注いでいらっしゃいます。
長編連続物は、私の若いころからのライフワークです。台本は全て保管しており、現在では、500席以上になります。
長編連続物の復活・継承は、私のバックボーンとも言えるかもしれませんね。
私は、講談において、長編連続物は大変重要であると考えています。
私の弟子であり、現在話題になっている六代目 神田伯山は、私の提唱していることを、師匠の言うとおりだと言って取り組んでくれていて、とても嬉しいですね。
ほかの弟子たちも、ことさら長編連続物に取り組んでくれて、ありがたいと思っています。
途絶えがちであった長編連続物を復活・継承するなかで、苦労も多かったと思います。苦難のなかで、志をもって続けてこられた熱意はどこから来るのでしょう。
それは「美学」ですね。私のテーマは、「男の美学」です。それは講談の美学にも通ずると思います。
やはり、美しく生きたい。見てくれの美しさではなく、心根(こころね)の美しさを大切にしたいと思います。
例えば、「惻隠(そくいん)の情」という言葉があります。人をおもんぱかるという意味です。また、「強きを挫き、弱きを助く」という言葉もあります。困っている者を見捨てない、弱い者に味方をする。こういうことが、男の美学だと思っています。
講談の中にこのような例がたくさん出てきます。
講談をやっているうちに、自分もこう生きたい、こうありたいと、講談に感化されていると感じます。
「講談ブーム」の火付け役として名高い六代目 神田伯山さんのほか、多くの弟子がいらっしゃいます。弟子たちを導いていくなかで、大切にしていることはなんですか。
平等に扱う、ということですね。
弟子には、いろいろな子がいます。師匠をよいしょするのが上手な子、不愛想な子、恵まれている子、一生懸命やっているが日の当たらない子、神田伯山のようにスターになる子…。いろいろな弟子がいますが、平等な目で見つめたいのです。
そのように思うように至ったのはなぜでしょうか。
弟子は子どもと同じです。
自分の血を分けた子は、いくつになっても心配するものでしょう。また、子どもが立派になってくれれば嬉しいし、子どもが苦労していれば、不憫(ふびん)に思います。
師弟は親子と同じです。
いろんな弟子がいますので、平等に目を配ってやらなきゃいけないと思いますね。
弟子への稽古の中で、気を付けていることはありますか。
稽古の仕方も、弟子の性格を見ながら変える必要があると思っています。
「人を見て法を説(と)け」という格言がありますが、まさにその通りで、自分のやり方を押し付けるだけでは、弟子は育ちません。
人によって感受性も違いますし、性格も、生い立ちも異なります。
上野動物園の飼育員に以前聞いた話ですが、動物ですら個性があり、みんな違うそうです。
専門用語で個体識別と言うそうですが、そのうえで、個体に合った飼育をしなくてはならないそうです。
動物と人間とは異なりますが、弟子の指導にも通じる点があると思います。
その人を見て、その人に合った教育をするのです。
その人に合った教育とは、どのようなものでしょうか。
個性を見つけて、個性を伸ばしてやる必要があります。
芸の世界に飛び込んだ人間は、みんな自分探しをしていると言えると思います。
師匠は、弟子の自分探しの助っ人になってやればよいと思っています。
自分が見えてくると、個性がだんだんと出てきます。
今は「個」の時代ですから、芸でも個性が重視されると思います。
私が若いときは、個性よりも話のうまさが珍重されていました。うまい講談師になりたい、と思っていました。
それから50年経ち、いまはうまさよりも個性が重視されています。
education(教育)は、元は「引き出す」という意味だと聞いたことがありますが、個性を見つけて、引き出し、開花させる。師匠は、それを助力してあげる。
そのように考えて、弟子たちと向き合っています。
本日は、ありがとうございました。
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